ファクスについての日中意識

                                黄 文葦


 昨年から、新型コロナ時代のファクスの行方について、よく考えている。きっかけは日本の政府機関が新型コロナの感染者人数の集計などにファクスを使うことだと思う。因みに、ネット上、「fax」のカナ表記はファクスとファックス、二つがあるのが、新聞では「fax」の表記は「ファクス」。


 

新型コロナ、ファクスの進歩を促進したのか、それとも終焉させてしまったのか。 東京都福祉保健局のホームページ上、聴覚に障害のある方等、電話での相談が難しい方向けにファクシミリでのご相談を受け付けていると書かれている。ファクス番号(03-5388-1396)とファクス相談票が載せされている。 対応内容は、新型コロナウイルス感染症への感染が疑われる方の相談や、感染の予防に関すること、心配な症状が出たときの対応など、新型コロナウイルス感染症に関する相談だ。 



これはとても良い日本行政の長所で、弱者に気づかい。新型コロナの感染者人数の集計などにファクスを使うことで、時代に遅れると揶揄されているらしいだが、電話での相談が難しい方々には、ファクス相談は確かに助かる。  



日本では、ファクスはまだまだ使い道がある。令和元年の総務省公表の通信利用動向調査によれば、企業としてはまだまだファクス需要があるのも確かで、ファクスを利用している事業所は95%を超えている。 個人の利用者もまた大勢いる。ファクスでは、高齢者向けの機種が人気だと言われる。高齢者にとっては電話番号だけで気軽に使えるのもファクスならではのメリット。直筆で書いたものを送信できるので気持ちが伝わるという。



今の段階で、高齢者、障害者にとっては、ファクスは欠かせないものであるかもしれない。 実際に、日本ではファクスは進化している。紙を省くファクスが誕生した。eFaxは、PCやスマートフォンでファクスの送受信ができるインターネット経由のサービスがある。現在、法人組織がよく使うサービス。


  

中国語で、ファクスを「傳真」と言う。響きがいい言葉だ。文字通りで解釈すれば、真実・本物をお届けすること。 この数年、仕事の関係で中国側の人と連絡を取るときは、ほぼWeChatで打ち合わせをし、WeChatでファイルを転送している。日々、便利さを追求している。ファクスのことをほとんど忘れていた。


  

先日、中国のIT会社に勤める知人に中国のファクス事情を聴いてきた。意外にも、相手からファクスの長所を教えてくださった。以下はその話のまとめである。 

「企業は今でもファクスを持っている。本当にもうあまり使われていないけど。ファクスは、2台の電話機間で画像データを直接転送し、受信機が直接プリントアウトするものです。コピーベースのデータ転送の場合は、メールと比較してもやはり便利なものです」

 「ファクスはインターネットではなく、両方の電話から端から端まで直接送られてきます。受信の方がずっと即時に受け取られる。メールはたまに紛失します」 

「ファクスは通常は使用しないけど、商取引に限定しています。例えば、私の会社は海外の銀行と取引をしている。時には相手方からは、こちらから署名をして欲しい書類があり、国際宅配便かファクスで送って欲しいと言われたのですが、やはり国際郵便には時間がかかるので、ファクスを送ることになりました」

 「ファクスはピアツーピアのコミュニケーションツールであり、一般的にはファクスによる文書が法的に有効です。メールは傍受しやすく、ファクスはメールよりも安全性が高く機密性が高い。電子メール等が法的証拠として使えるかどうかは、いまだに国内外で議論されており、ファクスは手紙に相当するものとされています」。


 「ファクスは、常にアップグレードし、進化していることだけを、時代遅れになることはないと思います。中国の金恒技術(深セン)有限公司は2002年より世界初の知的財産権を持つデジタルファクス機「3G-FAX」を発売し、ファクス機業界はデジタルファクス機に移行し、発展しています」。

なるほど、日本でも中国でも、ファクスは進化している。今、ファクスはデジタルとアナログの二種類がある。アナログからデジタルへ移行する過程は、そんな急がなくてもいいだろう。アナログの名残と後味をじっくり味わおう。 



日本では、伝統的なファクスがまだ役割を果たしていること、それは弱者に優しい社会だという証拠の一つであるかもしれない。 新型コロナが時代の一時停止ボタンを押したようである。かつて多くの国特に中国が何としてでも開発と発展を求めていた。これから、進歩の沿道の風景をじっくり見るために、伝統や文化を失わないようにするために、少しペースを落として歩むべきだと思う。


 

最も、言いたいことは、ありのままで、偽りがないで「真実を伝える」こと、これらファクスの最大な特徴を大事にしなくてはならない。マスコミもファクスのように、真実・真相を伝達すればいいだろう。 

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍