コロナ感染対策と東京五輪、両立できるように…

                                      黄 文葦

東京五輪について、最近、中止を求める声がさらに強まっている。東京五輪に関する議論はほとんど暗澹たるものばかり。周りでもSNS上でも開催反対派は明らかに圧倒的に多い。ところで、競泳日本代表の池江璃花子選手が5月7日、自身のツイッターを更新し、自らのアカウントに「(東京五輪代表を)辞退してほしい」「(五輪の開催に対して)反対の声をあげてほしい」といったメッセージが複数寄せられていることを明かした。 

東京五輪の開催に反対するのは理解できるのが、心のない言葉を選手個人に向けるのは、それも一種の「自粛警察」の行為だと考える。妙な正義感を振りかざす人が多かったらしい。新型コロナの感染拡大には多くの人がストレスを感じるはず。ある程度のストレスが溜まってくると、人は誰かを攻撃して気持ちを発散させたくなるかもしれないが、「正義の名」のもとに言葉暴力を行使してはいけない。五輪参加予定の選手に「辞退して」を言うのは残酷ではないか。 

 正直言って、昨年から、オリンピックに関するイメージが変わった。本来なら、数多くの国が競ってオリンピックを招致し、開催権を得た国は国を挙げて喜ぶ。オリンピックは栄光と使命の代名詞。東京がオリンピックの開催権を得たとき、筆者も多くの人たちと同じように興奮した。人生の中、自分は住む都市で五輪が開催されることはめったにないだろう。 

 しかし、2020年の東京オリンピックは昨年、1年延期せざるを得なくなり、2年目も同じような厄介な問題に直面している。国民の関心と反発が同時にますます強めている。現在、五輪は日本人の心の負担になるではないか、という印象さえがある。 

 ただし、東京五輪に反対しても、オリンピックの素晴らしさを否定してはならない。東京五輪には本当にポジティブなことは何もないのだろうか。そうではないと思う。東京五輪を思うと、最近、いつも二人の女性の顔を浮かぶ。 一人は闘病生活を終え、五輪代表をもぎ取った池江璃花子さん、池江さんは白血病を克服し、4月の日本選手権で4冠を達成。400メートルリレーと400メートルメドレーリレーのメンバーとして、東京五輪の代表権を勝ち取っていた。池江さんの不屈の精神は多くの人に勇気をつけたと思う。「辞退して」の声に対して、池江さんが堂々と反論すればいい。 

 もう一人は、聖火リレーの公式アンバサダーを務める女優の石原さとみさん、多くの有名人が続々聖火ランナーを辞退してきた中、石原さんは終始一貫の素晴らしい笑顔で、聖火を手に使命を果たしている。被爆者と親交があり、長崎でのリレー参加を希望した石原さんは「これからも被爆者の思いを胸に平和に向けて行動していきたい」と話した。その笑顔に癒される。本当に、テレビの中、政治家の暗い顔に見飽きた。 

 東京五輪のポジティブ面を中国でも探してみた。中国では、東京五輪について、意外な注目点が出されている。日本のグラフィックデザイナーの廣村正彰さんが2017年から2019年にかけて、 2020年東京オリンピック大会ピクトグラム開発チームを営んでいた。 

 スポーツピクトグラムは、1964年東京五輪において世界中から来日する観客に言語を問わずに競技を識別してもらう手段。昨年2月、東京2020組織委員会は、オリンピック33競技50種類、パラリンピック22競技23種類の「動くスポーツピクトグラム」を発表した。 これは、廣村正彰さんをはじめとする開発チームによる東京2020スポーツピクトグラムを発展させたもの。

また、そのスポーツピクトグラムを大会史上初めて「動かす」ことに挑戦したのは、日本の映像デザイナーである井口皓太さん。 中国のネット世論は、二人の日本人芸術家がデザインした「動くスポーツピクトグラム」を絶賛している。日本人しかできない発想と技だと言われる。無駄な装飾を排したシンプルなグラフィックは、それぞれのスポーツの特徴をさりげなく伝え、アスリートたちのエネルギッシュな姿勢を生き生きと表現しているという。 

緊急事態宣言の適用初日となった4月25日、国際親善試合をするために、バレーボール世界ランキング1位の中国女子代表の約20人が来日した。日本代表と国際親善試合した。その無観客となった試合を取材した中国マスコミの記者が「安全安心なオリンピックを実現できる」とレポートをした。郎平監督もマスコミに向け、試合関する日本の感染対策を肯定した。 

 東京がオリンピック招致に成功したとき、多くの中国人は支持を表明した。日本と中国の時差が1時間しかない。テレビでオリンピックの生中継を見ることができて便利だ。さらに、お隣の日本に観戦に来るのも気楽だろう。まさか、東京五輪が海外からの観客を受けいれず、無観客試合になるかもしれないとは… 

今のところ、東京五輪が本当に開催できるかどうか、またはっきり断言できない。ただ、忘れてはならないことは、この数年間、多くの人が東京五輪を支えている。反対意見が多い中で、彼らは今も、コツコツとオリンピックの準備を進めている。オリンピックに出場権を得るために一生懸命努力してきた世界中のアスリートたちが、オリンピックの中止によってオリンピックを参加する権利を失うことになれば、それは一生の悔いになるだろう。また、今、どんな状況でも選手は参加するという前提でいなければならない。 

東京五輪が7月に開催できれば、史上稀なコロナと重ねてきたオリンピック大会になる。初めてのソシャルディスタンスを取り、無観客、ウイルスと共存する五輪になるだろうか。2020年東京五輪はオリンピック大会の改革のきっかけになるかもしれない。近代五輪がスタートした地であるアテネに開催地を固定し、参加国が国力に応じて費用を負担してやるという意見が出た。 

 勿論、安全安心な経済活性化させる東京五輪を開催してほしいのが、7月になっても、コロナがなくなれないと考える。それで、コロナ感染対策と東京五輪、両立できるように祈念したい。2020年から2021年まで、日本で暮らしている人たちが新型コロナと東京五輪の中、生きている。  

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍