窮地に落ちている日本語学校と留学生

                              黄 文葦

新型コロナ以来、多くの業界が経営難に落ちている。その中、留学生を受け入れる日本語学校は未曾有の危機に直面している。

日本語学校は、日本に留学してくる外国人が最初にスタートした場所。学校の規模は様々だが、教え方は大体同じで、基本的な日本語と社会的・文化的な基礎知識を教える。外国人留学生は、日本語学校で言葉の壁を乗り越えた後、大学や大学院に進学あるいは就職・帰国する。 

 日本語学校は半日しか授業がなく、残りの時間はアルバイトをするなど、自由に過ごすことができる。近年、中国人留学生が徐々にアルバイトをする人が減少しており、東南アジア諸国の学生は20年前の中国人学生のように働きながら勉強している。 

 この数年間、日本中、日本語学校の数がすごく増えてきた。現在、日本語学校は800校近くまであり、私立大学よりも多い。日本語学校の中国人経営者も多い。日本人・中国人・韓国人が連携し、日本語学校を経営するケースも珍しくはない。ただし、玉石混淆する状況もある。留学生教育を「教育」として営むではなく、ただのビジネスとして扱う傾向があったようである。 言うまでもなく、日本語学校を経営について、「学生募集がさえできればいい」、このような単純なことではない。日本語学校の日本語教育は大事な教育である。留学生には美しい日本語にふれ合い、また日本社会・文化を認識する最初の港である。 

仕事の関係で、よく日本語学校を訪問している。高架橋のそばにある学校が多いと気づいた。これはなぜだろうか? 高架橋を行き来する車の騒音が気になる。高架橋の周辺の不動産価格が相対的に安いからだろうね。 日本語学校は、学校法人に限らず、一般企業や個人でも運営できるため、大学や専門学校に比べて設立のハードルが低い。そのため、校舎について、高架橋という道路の切れ目に隣接していても構わない。もちろん、建物自体の品質や防音性が高ければ、学校の運営には問題なさそうだ。 

 日本語学校が運営しやすい反面、問題点としてよく知られているのは、教師の給料が低いことだ。 何人かの日本語教師が、「留学生と接し、日本語を教える仕事は魅力的だが、十分な生活をするのは難しく、2〜3年で転職する人が多い」と語ってくれた。 日本語教師は男性の比率が低く、非正規雇用者(非常勤講師)も多いため、授業の質にばらつきがある。これは経営上の問題だけではなく、日本政府の語学学校への支援も不十分なようで、長年にわたって一人が複数の学校の校長を務めているケースもある。 

 この十数年ほど、日本語学校の運営は、日中の政治的な関係の浮き沈みと自然災害の影響を少なからず受けてきた。日本では、在日中国人が経営する日本語学校が増えてきて、中国市場が大きいという利点がある。 2011年の東日本大震災、その後、日中の領土問題での緊迫により、日本語学校は厳しい状況に置かれていた。近年は東南アジアからの留学生の増加や、日中関係が平和な移行に伴い、日本語学校の業績も好調になった。留学生を集めるのが上手な中国の経営者と、生徒を育てるのに熱心な日本の教師が、お互いに補完し合って留学生教育を支えてきた。 多くの日本語学校運営者は、たくさんの労力を費やしている。

先日、千葉で日本語学校を経営している若手経営者に会った。千葉の日本語学校は東京の学校とは異なり、場所は比較的孤立しており、周りの娯楽施設も少ない。 彼は、自分の特徴ある学校を運営するために、日本語教育をしながら、特定技能試験を留学生に勉強させる。経営者として、常に千葉の多くの企業を訪問し、連携関係を築いて、企業と留学生のマッチングを行うことも多い。 

 多くの留学生が特定技能試験に合格し、日本語学校を卒業したら直ぐに就職できた。彼の学校は「就職に強い日本語学校」になっている。学生にメリットをもたらし、日本企業の人手不足の問題を解決し、成功を収めている日本語学校である。 

日本政府が「留学生30万人計画」を打ち出したのは2008年のこと。 2018年5月現在、日本国内の留学生数は29万9千人に達し、そのうち日本語学校は9万人を超えた。留学生30万人の目標はほぼ達成された。 しかし、2020年から、世界中新型コロナが感染拡大。文部科学省の外国人留学生在籍状況調査によると、2020年5月1日現在の外国人留学生数は279,597人(対前年比32,617人(10.4%)減)だった。留学生数の多い国・地域は中国121,845人(対前年比2,591人減)、ベトナム62,233人(対前年比11,156人減)、ネパール24,002人(対前年比2,306人減)だった。 

留学生数には、新型コロナの影響により、予定していた時期の渡日ができず、やむなく海外現地でオンライン授業等を受講していた学生も含まれている。 昨年来の感染拡大により、多くの在日外国人留学生が生活に支障をきたしている。

知り合いのベトナム人留学生は、以前働いていたレストランが新型コロナのせいでお客さんがいなくなり、経営が成り立たなくなったため、アルバイトができなくなって閉店したそうだ。 デリバリーボーイとして働かなければならなかったが、収入が限られていたため、通っていた専門学校の授業料も払えず、学校側と交渉して分割払いにしてもらったところ、ありがたいことに学校側も了承してくれた。 

 彼の家族はベトナムで小さな食料品店を経営しているが、ベトナムでも新型コロナの影響で、経済的に厳しい状況にある。帰国するにしても、現在、東京からベトナムまで約25万円もする航空券を買う余裕はない。 このベトナム人留学生のように、勉強や生活で困難に直面している留学生は他にもたくさんいる。日本政府はこれらの留学生を助けてほしい。 

 一方、日本語学校にとっては、生徒が日本に来られないということは、経営が成り立たないということだ。日本語学校を売るケースも日本語講師が転職するケース増えている… 

 筆者は楽観的な予想をしているが、新型コロナの後、来年以降、中国人留学生は検疫などの理由で欧米に留学しにくくなり、代わりに近くの日本に来る人が増えるのではないかと考えている。これから中国人が日本で「爆留学」するかもしれない。 幸いなことに日本語学校業界はすでに動いている。

先日、ある日本語学校の先生が筆者に以下内容のメッセージを送ってくださった。 

「日本語を学ぶ人は世界に300万人以上いると言われています。その中で、日本留学を目指す人は年間で約4万人、1%に過ぎません。その貴重な人たちが、コロナ禍の入国制限に阻まれ、来日できずにいます。 彼らの多くは、何年もかけて日本留学を目指して準備してきた若者たちです。観光やスポーツイベントのために来日する人たちとは質的に大いに異なり、これから日本の一員あるいはパートナーとなる人たちです。」 

「コロナ禍にあっても、海外では留学生受け入れが着々と進められています。このような現状を鑑み、日本留学を目指しながら裏切られた思いで過ごしている多くの若者の声を届け、日本が冷静な受け入れ議論へと進むことを心より願い、サイトを立ち上げました。」 

「新規入国の留学生によるクラスターは発生していないこと、非常にコントロールされた受け入れ体制が整備されていることをご理解いただき、留学生の入国にご協力いただけることを目指します。 今、海外から入国をストップされている留学生たちのため、日本語業界が声を上げています。」

「日本は私達に扉を開いて、日本の入国制限について~~日本留学を希望する学生たちの窮状と日本への思い」、拡散に協力してほしいと依頼をいただきました!  

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍