中国人は、三島由紀夫についてはどのように受け止められている?
【質問】
前号の記事で、川端康成が中国で広く親しまれていると知ってびっくりしました。そこで興味が湧いたのは、川端とも縁の深かった三島由紀夫についてはどのように受け止められているのでしょう?
【回答】
川端康成の作品が中国で広く読まれていることは、80年代日本の映画・ドラマが中国で流行っていたことに関連があると思います。映画「伊豆の踊り子」のおかげで、川端康成が高倉健、栗原小巻など日本のスターたちと一緒に中国人に知られました。特に中国の学者、文学者たちが川端康成の作品を高評価しています。
三島由紀夫の作品も中国で出版されています。その作品を好きな人も少なくないです。「金閣寺」などたいへん人気です。多くの文学者たちが三島由紀夫作品に愛着を持っているのです。
2021年9月、三島由紀夫作品の「金閣寺」「潮騒」「天人五衰」などを訳した中国の日本文学翻訳者の林少華氏が、上海蔦屋書店で、読者に三島由紀夫の文学の不思議な魅力を語りました。 林少華は、三島由紀夫の文学に影響を与えたいくつかの個人的な特徴、すなわち武士気質、美学への追求、天皇崇拝、殉教への愛情を分析しました。 訳者の林少華氏の感覚では、「潮騒」は、人生の魅力と青春の光にあふれた三島由紀夫の青春文学の傑作です。死の魅力と破壊の壮大さは、三島のいわゆる「破壊の美」に焦点を当てた「金閣寺」全体に現れており、キーワードは「破壊」です。
一方、「天人五衰」は、三島の死と生死の輪廻への探究心と、その探究が失敗したときの絶望を表現したものです。キーワードは「崩壊」です。そのため、林少華氏にとって「天人五衰」の翻訳作業は非常に苦痛でありました。
一般の読者にも、三島由紀夫の作品を高く評価しているようです。美意識の持ち主だと言われます。日本、そして近代世界文学の歴史に近づけば、三島由紀夫を見なければならないということです。ただし、政治的な角度から、三島由紀夫を右翼だと認識する人もかなりいます。
(メルマガ黄文葦の日中楽話第78話より)
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