食欲の秋?そしたら1年中秋だ!

なおこ おーつ


ぷくぷくしているねえと、幼稚園生の頃からよく言われていた。 

それが可愛がられているんだと分かっていた私は、得意げに親戚の間を駆け回っていた。 

でも、それがだんだんと褒め言葉にならなくなったのは小学4年生の時。 

中学受験をするために、放課後は外で遊ばなくなり、溜まるのは勉強に対するストレスばかり。

なのに、小さい頃から運動が好きで、その分たくさん食べていた私の食欲は底知れず状態だった。

特に大好きな母の作る料理は、私の唯一の癒しの時間だった。 

到底選ぶことなんてできないけれど、渋いものが好きだった私はササミ肉や鳥の胸肉を片栗粉でまぶして湯がき、おろしポン酢をかければぷるぷる食感がたまらない「ぷるるん鶏」や、揚げた瞬間にじゅわっと音がして、濃い紫が鮮やかな青に変わる、味がしみた「茄子の揚げ浸し」がお気に入り。 

誕生日には、何でも好きなものをリクエストしていいと甘やかされて生クリーム入りでコクのあるふわふわオムライスや、甘酸っぱいタレとレタスとサクサクに揚がったお肉の相性がクセになる油淋鶏など、毎年懲りずに様々なものをリクエストした。

そして今では大好きな料理は母に教えてもらい自分で作れるようになってしまった。

……おかげで昔も今も細いとは言われたことのない体型。

「食べることが嫌いなの。」と細い体型にしか着れない服を着て、颯爽と街中を歩く女の子が羨ましくなる時もある。


でも、1人の大人になるにつれ、食欲があることほど幸せなことは無いのではと感じるようになった。

私が食べていたのは、母が作る「ご飯」という名の「愛情」だったから。

兄弟3人がずっと仲が良いのも、家族5人で囲むあたたかい食事の時間を大切にしていたからであって、 誰1人欠けても、あのご飯は記憶に残るくらい美味しいとは思わなかっただろう。


今は両親が共働きの世帯が増えて、個食が普通になってしまった。 農林水産省によれば、ほとんど毎日個食である20代・30代男性は4人に1人が該当するそうだ。

忙しい、一緒に食べる人がいない、会話をしなきゃいけないのが面倒だ……など。

一日3回もある食事の時間を、今の人は軽く扱いすぎではないだろうか?

誰かと美味しい味やその時の記憶を共有することが、「あぁ、またあれが食べたいな」という食欲に繋がるんだろうと思う。 

せっかくの食欲の秋と言われるこの時期だからこそ、もっと誰かと美味しいものを食べることに思い出の時間を費やしてみてはどうだろう?


参考URL:

http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/h28/h28_h/book/part1/chap1/b1_c1_1_03.html

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