中国在住のアメリカ人の名前は「曹操」

                                黄  文葦


★「中国で住む外国人、韓国人が一番多い」  

近年、中国に暮らしている外国人がだんだん増加してきた。その背景には、中国の経済成長がある。現在、およそ150万の外国人がビジネス・就職・留学の目的で中国に滞在する。 中国の国家外国専門家管理局の統計によると、2018年まで、上海で働く外国人の数は21万5000人で、国内全体の23.7%を占め、全国1位となった。中国で働く外国人の数は90万人以上に達したという。 2009年から2018年にかけて、中国への留学生数は23万8200人から49万2200人へと倍増した。

 中国で住む外国人の中、意外にも韓国人が一番多い、100万人ぐらい。外資企業の40%は韓国会社。二番目と三番目はアメリカと日本。中国に滞在する日本人は2018年10月現在14万人で、最も多い都市は上海市の4万人。 それにしても、移民は中国の総人口の0.7%にすぎない。 


 ★「外国人に仕事と嫁さんを奪われる?」

外国人が憧れの中国都市は北京・上海だけではなく、広東省の広州と深圳にも大人気だそうである。広州に住む友人によると、道を歩いていて肌色黒いアフリカ人を見かけることはよくあるそうで、アフリカの友達がいることはぜんぜん珍しくない。  

この数年間、深圳では、インド人がすごく増えてきた。大勢のIT業界を志向しているインドの若者は、スキルを磨くために「人類史上最速の成長都市」である深圳にやってきた。彼らはこの大都市で仕事を見つければ、いい将来が待っていると確信するらしい。そういえば、IT人材が集まる東京の江戸川区にもインド村が形成されている。

しかし、その結果、中国の大都市では、多くの若者が外国の人材に仕事を奪われるという問題に直面している。仕事だけではなく、将来の結婚相手にも外国人に奪われる恐れがあるという。現在の中国では、男性の人口が女性よりはるかに多い。困っている結婚できない男が増えつつある。  

中国司法部(省)は今年2月27日、外国人による永住居留申請のための条件を明確化し、申請プログラムとプロセスを規範化し、中国に永住する外国人の手続きをより簡便化することを目的に、「外国人永久居留管理条例(意見募集稿)」を発表した。それについて、ネットで議論沸騰、その多くは懸念と反対を表明していた。 


 ★「アメリカ人の『曹操』に敬意を払いたい」 

中国では外国人の増加に伴い、外国人と中国人の間、文化的衝突が時折発生している。一つの例を挙げよう。 20数年間中国在住のアメリカ人がいる。彼は中国での職業は映画俳優と文化交流会社の経営者である。彼の名は「曹操」である。勿論、それは彼自身がつけた名前。彼は「曹操」という歴史人物が大好きで、「中国が大好きだ」とも公言している。 このアメリカ人の曹操は中国語が頗る上手で、普通の中国人よりうまい。中国で最も人気のあるミニブログサイトWeibo(新浪微博)で、168万のフォロワーを獲得した。筆者も彼のファンの一人である。  

言うまでもなく、本来「曹操」は三国時代の文武両全の英雄で、悪役と天才の二つ顔を持つ。アメリカ人が「曹操」と名乗ったことについては、中国のネット上、「このアメリカ人面白い!中国伝統文化に精通する現代の曹操だ」「アメリカ人なのに、なぜ曹操を名付け?それは中華文化に対する不敬だ!」と、賛否両論の声が上がっている。 これが中国文化と欧米文化の違いで、欧米人、特にアメリカ人は自分の子供に尊敬する人の名前をつける。

中国の伝統では子供に尊敬する人名前をつけるのは失礼だとされている。 というわけで、中国伝統文化に憧れの外国人が中国で時には誤解されるかもしれない。

外国人の増加に伴い、中国人には、古い伝統的なしがらみをいかに脱却し、自分の考えをアップデートするかという課題が重要である。 アメリカ人の「曹操」に敬意を払いたい。中国の外国人には、「曹操」だけでなく、「劉備」や「諸葛亮」もいてほしいね。

                     (この文はメルマガ「黄文葦の日中楽話」の時評 )


一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍