日中関係に関する世論調査は無意味だ

                                    黄 文葦


日本の民間非営利団体「言論NPO」と中国国際出版集団は11月17日、両国で実施した共同世論調査の結果を発表した。中国に「良くない」印象を持つ日本人は前年比5.0ポイント増の89.7%となり、対中感情の悪化を裏付けた。 



「日中関係は重要」と考える中国人が4人に3人に上る一方、日本人は調査が始まった2005年以来初めて7割を切った。中国に「良い」印象を持つ日本人は5.0ポイント減の10.0%にとどまった。  

(中国の印象「良くない」89% 「良い」10%、日本の感情悪化 https://news.yahoo.co.jp/articles/fe5a809ccb2e3c5178fc5a5bb0f70ec45644d552)


 毎年、内閣府には「外交に関する世論調査」にも行われる。毎年、そういうことがニュースになった…もうニュースにならないほうがいいではないか。 このような世論調査、全国の数千人を対象に行われ、全国人口の中のわすかではある。「親しみを感じない」など理由は勿論いろいろある。


  

日本人の中でも、中国共産党が大嫌いだが、一生懸命中国語を学んでいる人が大勢いるはず。さらに言えば、最も典型的なこととしては、中国政府の独裁体制に嫌いでも、中国の伝統文化に愛着を持つ日本人が大勢いる。 嫌いになっても、「知己知彼」が必要だから(己を知り彼を知る)。相手国の文化を勉強することによって、段々考え方深めて行くだろう。 



日中関係は、もうただの世論調査の数字で物語られない。数字だけでは分からない事はたくさんある。選挙結果だって、必ずしも人々の気持ちを反映してはいないから。日本と中国、隣国だから運命共同体、助け合わないと何もできないという、大人として当然の自覚を持つこと。感情のおもむくままに相手を罵倒するのは、子供のすることである。


  

環境であれ安全保障であれ、協力する過程の中ではじめて発見できる相手の一面もあるだし、本当のリスペクトはそういう過程からしか生まれない。相手国への親近感があるかないかなんて、実はたいした問題じゃない。 日本は戦前の過ちに学び、中国は過剰な愛国主義・民族主義に警戒、ナショナリズムが衝突に繋がらない危機回避の仕組みを構築することは大事である。



国民間の相互交流はもちろん重要である。 中国に「良くない」印象を持つ日本人が増えている、こういうニュースが出ると、ますます嫌中憎韓派が増える恐れがある。思慮の浅い人々の中には、このニュースを見て、「そういうことであれば、時代の風潮に合わせて、自分も嫌中憎韓派になるか!」と思う人間が、出てくるではないか。一種の同調圧力だと言えるかもしれない。


 

世論調査には、「中国政府に」「中国の人々に」「中国の文化に」などと分ければ、まったく違う結果になると思う。あえて言えば、日中関係に関する世論調査は無意味だ。 近年、中国への日本人旅行者が減っているのは気になる。誤解を恐れずにいうと、日本人は嫌なものに目を背ける傾向がある。やはり敵を知ろうとしないと、相手のことは絶対理解できない。



新型コロナの後、どんどん中国旅行へ行ってみてはいかがですか。 かつてFBの友達の中、中国人には「痰を吐く」というイメージしか持たない方がいった。日本では、「不思議な中国人」、「中国人の本音」、「中国人との付き合い方」とか、そういう類の本がたくさん出ているのが、正直言って、それらの本は、真の中国や中国人を知っていても役に立たない。 



それらの見方はあくまでも個人的な見解で、「誇張表現」は少なくない。実際に中国では通用できるか否か、疑問がある。異文化・異国に対して、あくまでも自分の目で見て、肌で感じて、それはベストである。 勿論、中国人は日本人に対して、「誇張表現」も少なくない。日本人を「神格化」させることすらある。例えば、長時間渋滞の高速道路で、日本人はどんなに忍耐し、よく秩序を守るとか…千人集合なのに、全然音もしないとか…時には、相手を等身大で見ることも、相手に等身大で見られることも難しい。


 

もし中国で同じ世論調査をしたら、日本には「親しみ」を感じる中国人が増えていると信じる。何故なら、実際に自身の目で日本を確かめる人が増えているので…中国に「親しみ感じない」過去最高であったとはいえ、「日中関係発展が重要」という認識を持つ人が多いはずだ。 まあ、お互い、なぜ嫌われるのか深く考えるのも悪くない。



日本と中国の間にいる人たちは、「自分」は、あくまで「自分」であり、自分の信念は、世論調査の数字に左右されるものであってはならないはずである。 

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍