中国エリート高齢者の老後の過ごし方

【中国日常】コラム

(特約リポーター 孟武、中国福建省在住、自営業者。十数年間証券会社勤務、現在お酒とプーアル茶の貿易関係の会社を経営)

現在、人口の高齢化は世界共通の課題であり、中国も例外ではない。日本は老いていく、ドイツは老いていく、中国は老いていくとみんな言っているのが、問題は日本とドイツは先進国であり、中国は「豊かになる前に老いていく」ということだ。 

統計によると、現在、中国の60歳以上の人口は2億5400万人で、2050年には中国の60歳以上の人口は5億人になると予測されている。現在の中国の労働者の定年年齢は男性60歳、女性55歳であり、これは、社会全体で人口の18%の高齢者を養わなければならないことを意味する。さらに、2050年までに老齢人口は倍増する。 若者が結婚して子供が二人いれば、若い子が二人、老人が四人ということになり、負担が重く、喫緊の問題となる。

今の中国では、家庭養老がほとんどで、「子と孫が大勢いると一緒に幸せになる」というのが中国の伝統だ。 近年、国は老人ホームの建設を強く奨励しているのが、現実的に、老人ホームに行くことは、ほとんどの高齢者には受け入れられないことだ。

因みに、私はヨーロッパ旅行の際、一緒に旅をしていた北京の老夫婦が、老後のためにかなり独特なアレンジをしていた。 夫婦ともに70代前半で、両方とも国家機関の幹部を引退している。二人の年金を合わせて毎月約20000元(約32万円)。二人は以前政府からもらったマンション住宅を売った。家の売却から入手した800万元(約1億3千万円)を銀行の高利回りの資産運用(投資信託)商品に使う。 年間20万元ぐらいの投資収入で、北京のハイエンド老人ホームの60平方メートルの家具や電器など全部そろっている部屋を借りる。老人ホームの専用スタッフは、老夫婦の食事や健康維持に責任をもってサービスを提供する。 老夫婦の病気や入院費はほとんど国が負担してくれるので、毎月の年金を旅費の手配に充て、アレンジもたっぷりでとても幸せな老後生活を送っている。

 二人は事前に娘に相談せずに家を売却したそうで、後から知った娘は何も言わずに、資本金800万以上で安易にリスクの高い投資に手を出さないように、ただただ銀行に入れて利息を得て、収入に充てるように助言したそうだ。

老夫婦は、中国でも数少ない定年退職勝ち組と見なされている。 定年退職後の格差は深刻な状態だと思う。企業で定年退職して、毎月たった数千元の年金しかもらえない老人もたくさんいる。 国や社会がすべきことは、すべての老齢者の生活費用がしっかりと確保され、高齢者が尊厳を持って暮らせるようにすることだ。 

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍