中国に関する質問(二十三)

【中国人にとって、「民主主義」とはなに?】 

 【質問】 

アメリカでは1月20日にバイデン大統領が誕生しましたが、このたびの政権交代劇ほど「民主主義」の危機が叫ばれたことはないでしょう。ところで、中国の人々にとって「民主主義」という言葉はどのように受け止められているのでしょうか? 

 【回答】 

中国の人々にとって「民主主義」は馴染めない言葉です。普段の生活の中、あまり接触する機会がなさそうです。アメリカのトランプ政権時代、中国のマスコミがアメリカの「民主主義」を批判するばかりでした。それを混乱状態が続く「民主主義」だと言われます。 

 実は、現在、中国の人々にとって、「社会主義」と「共産主義」にもなじめない言葉になっているのです。「社会主義」であれ「資本主義」であれ、大事なことではなく、それより、「市場経済」に熱中するわけです。 言論自由と選挙について、食えないものなので、どうでもいいと思っている人が多いはずです。逆に、日本を「正真正銘の社会主義国」と認識する中国人も少なくないです。 

 毛沢東時代、「人民民主」という言葉がよく使われていたのです。「毛沢東時代の中国は、実際には人民民主化への道を歩んでおり、その民主化への道は、欧米の議会制民主主義や代議制民主主義とは大きく異なっている」と、現在の中国思想界では新左翼がよく語られる見解ですが、毛沢東時代は実際に多くの社会改革を進めたと考える人もいます。 

 現在の共産党政権には、民主社会主義と中国の特色ある社会主義は、全く異なる理論体系と発展の道筋であり、歴史的にも現実的にも、民主社会主義は中国の社会状況には適していない、中国の特色ある社会主義を堅持してこそ、中国は発展し、活性化することができるというイデオロギーで政権を運営しているようで、民主主義を否定するわけです。  

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とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍