人情社会の功と罪 バランスを取るのは難しい

「中国日常」コラム

(特約リポーター 孟武、中国福建省在住、自営業者。十数年間証券会社勤務、現在お酒とプーアル茶の貿易関係の会社を経営)


中国は古来より人情社会であり、上司と部下、親戚と友人、昔の戦友、昔の同僚、昔の同級生など、様々な社会的つながりがあり、馴れ合いの話が好きなのだ。人情社会に関しては、多くの公務員や一般の人でも深く理解していると思う。 

 浙江省のある県級市の政府部門の幹部は、昨年、規定により子供が政府機関施設内の幼稚園に通うことができるはずだが、入学規則が調整されて通えなくなったと言われ、あきらめざるを得なかった。 後になってわかったことだが、政府機関以外の人がさまざまなつながりで募集枠の1/3近くを占めていた。その後、その幹部は施設の幼稚園の園長にこの件を相談したところ、「どうしてもっと早く私たちに挨拶してくれなかったの?」と叱られたほどだった。 

 原則を守ることは「無愛想」と見られ、ルール通りに物事が進むと「融通が利かない」と疎開される。人情社会の典型的な特徴は、人々が好意や関係を語り、コネを持っている人が優先されることだ。 

これは、物事がうまくいかないとき、多くの人が最初に思いつくのが「知人を探す」「コネを求める」ということにもつながる。 実際、中国社会には「生老病死の人情関係」という大きな網があり、私たちの多くはその犠牲者であると同時に積極的な参加者でもある。人は裏口から物事を進める。その行為が社会の秩序を乱し、正義を損なうものであることを知らずに甘味を味わい、最終的には勝者はなく、我々は皆、被害者なのだ。 

 「人情消費」のせいで、一部の政府幹部が積極的または受動的に汚職の渦に巻き込まれている。役人としての威信を示すために個人的な好意を売る。 自分に媚びるために知人を持つことを好む人もいる。意図的にやるべきことを引きずって、相手に友達を探させたり、人間関係を探させたり…このような人間のもつれの人情社会が、政府の機能の構築に大きな影響を与えている。 また、政府がこの現象をなくすために、多くの努力がなされている。国民の利便性を高めるために、政府は国民の日常生活により密着したいくつかの機能部門をまとめ、行政サービスセンターを設置した。 

 その中、社会保険、医療保険、各種許認可手続きなどがある。政府部門の窓口には一般市民のための苦情や陳情のルートが設けられており、検査監督の部門が設置され、行政業務を監督するとともに、政府の幹部の教育を強化し、汚職を処罰している。 

 人情社会の負の要素が政治・法律分野に侵食してくると大問題になる。誰もが法の下では平等であり、国家は政治・法律分野の健全性を厳しく管理することを期待している。 人間社会のしがらみによって、中国人の中には人間関係に疲れを感じ、逃避行を選ぶ人もいる。極端な例では、ある老幹部の娘が外国人と結婚して海外に定住することを決めて、その父親は娘の発言に言葉を失って困惑したことがある。娘が言うには、「将来、あなたの孫や孫娘が学校に行くとき、誰かにコネを頼まなくても済むようになるでしょう」。

 しかし、文化の違いや考え方の違いから、東洋と西洋では人情社会に対する理解に根本的な違いがあるだと思う。 中国人の意識には一般的に、西洋社会はステレオタイプで冷酷だと思われる。中国人は人間の気持ち、家族、友情、愛情に頗る関心があり、人情にとても温かい面がある。中国人は儒教の影響を強く受けており、何事にも中庸の思考を持ち、多すぎても少なすぎてもいけない。人情社会も同じだが、人情社会の功と罪のバランスを取るのは難しいだろう。 

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍