中国に関する質問(二十八)

 「中国では、森会長を擁護する声が少なくないです」

 【質問】 

東京オリ・パラ組織委員会の森会長の「女性蔑視」発言が波紋を呼んでいます。その背景には古めかしい儒教的感覚があるのかもしれません。中国の人々はこの発言をどのように受け止めているのでしょうか? 

 【回答】 

森会長の「女性蔑視」発言について、一般の人々と専門家の意見が違っているようです。中国版Twitterと言われている微博(ウェイボー)を見てみたら、森会長を擁護する声が少なくないだそうです。 

 「彼は普通に本当のことを言っているだけだ。日本の世論が騒ぎすぎた」「女はよくしゃべる、これは事実です」「周りにはたくさんの女性がいて、私も同感。口が多すぎると効率が悪くなる。それは女性の性格なので、女性は悪いじゃないけどね」「森会長もう83歳だから、長い会議は耐えられないのは理解できる」などなどコメントがありました。

つまり、男女差別について、日本社会の反応と比べて、敏感ではないと見られます。 専門家は森会長の「女性蔑視」発言を日本女性の地位が低いという事態と分析しています。一人の日本研究学者の言論を紹介します。 上海の復旦大学日本研究センターの博士研究員である王天然氏は、「日本社会に存在する男女格差は構造的なものである」と指摘され、その背景には主に3つの理由が考えられると言います。 

 まず、教育の問題。現在に至るまで、日本社会における女子への期待は「良妻賢母」になることが主流であり、女性の成長の道筋や教育機会には男性との差があります。これに対し、日本の男性の多くは幼少期から出世を教えられ、職場で重要な責任を任されることを求め、ライフプランが好循環に入ること。

 第二に、エンパワーメントの問題。日本のほとんどの家庭では、男性が世帯主というのは、今でもこのパターンです。家事や家族との関係の複雑さ、不安に耐えながら、忙しいだけでなく、自尊心が低くなりがちな日本人女性は多い。 

 第三に、経済問題。家事労働が重く、専業主婦が正式な仕事に就くことができず、職場の女性は重要な中核的職に就くことが難しくなっています。日本では女性の貧困現象が深刻化しており、日に日に生存条件が悪化しています。 日本にとっては、男女共同参画を推進するスローガンを唱えるだけでは意味がなく、現状が変わらない限り、政治家の「女性差別的発言」は政治家としてのキャリアに影響を与えない。日本社会では、今でも森喜朗氏のような人は、目立ちたがり屋でのんきに隅々まで存在しているだろう。 

 言うまでもなく、中国でも昔から「女性蔑視」の言葉が多く存在しています。例えば、中国の清朝中期乾隆帝の時代(18世紀中頃)に書かれた中国長篇章回式白話小説「紅楼夢」の中、ある人物の口から「頭髪長見識短」(女は髪だけは長いが見識は浅い)という女性を軽視するような言葉が出る。現在あまり誰も本気に言わなくなったのですが、偶に、男女友人同士の間、「頭髪長見識短」を冗談で話します。 

 「唯女子与小人為難養也」(女と小人ほど扱いにくい者はない)という言葉は孔子の「論語」の一節。昔、これを孔子の女性軽視の「欠点」と見なされているのですが、実際に、孔子は鋭くその時代の女性の地位と特徴を見出したのではないか。女性が完全に男性に従属していた時代、権力のある男性の周りでは、女性たちは好意や寵愛を競い合っていたため、女性の不利益が顕在化していました。 現在、中国の女性はますます強くなってきました。共産党政権の女性党員の比例は25%ぐらい。共産党幹部は公の場で、「女性蔑視」の言葉を言うのは不可能です。 

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍