オリンピックと「毛沢東バッジ」

                                黄 文葦

中国の社会はここ数年で大きく変化した。指導者は、国と民族の誇りを積極的に鼓舞してきた。特にソーシャルメディアでは、あからさまな排外主義になってしまうことがよくある。オリンピックで、台湾の選手が中国の選手に勝ったとき、中国のSNSには不快な罵声が飛び交った。 

中国では、オリンピックの政治化が続いている。先日、ニューヨークの中国領事館は、台湾と南シナ海を含まない中国地図を使用したアメリカのテレビ局NBCに抗議した。 重量挙げの石智勇選手は、中国共産党創立100周年を記念して金メダルを党に捧げたいと語っていた。また、自転車競技の表彰式では、中国の自転車選手、鮑珊菊と鍾天使は、女子チームスプリントで優勝した。表彰式の際、胸に「毛沢東バッジ」を着けていた。  

 中国の若者の間では、毛沢東を「神」とみなす傾向が数年前から再び強まっている。また、一部の政府系メディアも宣伝の一翼を担っている。これは、オリンピック選手にも影響している。 

2008年の北京オリンピックを回想すると、バドミントン選手の林丹が男子シングルスで金メダルを獲得したとき、彼のジャージの中国国旗の上に小さな毛沢東のバッジが付けられていた。その時、林丹が公の場でこういうふうに語った。「毛主席が自分に力をつけてくれたのではないかと思います。毛主席にはとても感謝していますし、今度はちゃんとお参りに行きたいと思っています」。 

 近年、中国では、毛沢東バッジを含む「赤いコレクション」のブームが再燃している。実は毛沢東バッジは現在でも入手が難しくない。 中国のオンラインショッピングプラットフォーム「タオバオ」や「京東商城」では、毛沢東のバッジの販売者を簡単に見つけることができる。あるところ、3.6cmのバッジを3.6元(約60円)で販売している。 

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍