中国では、シンプルな伝統的な美容術がある

【質問】 

女性官僚の「美容汚職」の記事を興味深く読みました。ことの善し悪しはともかく、中国には長い歴史に育まれたあっと驚くようなぜいたくな美容術がありそうですが? 

【回答】 中国の美容製品の歴史は非常に長く、最も原始的なものは米のとぎ汁で、子供の頃はこれで顔を洗っていいと言われていました。 

隋や唐の時代、中国では決まった処方のトイレタリー製品である澡豆(そうず)が作られていました。澡豆(そうず)は、昔、貴族が使うための粉でした。 古代中国では澡豆は、大豆や赤小豆粉に胡粉、土瓜根(カラスウリの根)、白檀(びやくだん)、麝香(じやこう)など生薬を10~30種配合したものが使われていました。日本へも古くから伝わり澡豆を佐久豆(さくず)と訛ってよばれていたらしいです。顔や身体を洗うと同時に、色を白くし、肌荒れを治し、きめを細かにするとして古くから用いられてきた化粧料です。 

中国古代の有名な美女・女性権力者たちも自身独特な美容秘策を持っているようです。 例えば、楊貴妃の名を冠した美容秘方「楊太真紅玉膏(ようたいしんこうぎょくこう)」 は、楊貴妃が自分の色を高めるために使った美容品の一つです。アーモンドを主薬としており、アーモンドの皮を剥き、タルクと薄めのパウダーを同量ずつ取り、すり潰して蒸し、ロブスターとムスクを少々加えて、夜、洗顔後に顔に塗り、顔の美白効果が非常に高いと言えます。 

中国の女性は今、欧米や日本の美容法に憧れています。ビューティーブランドが中国で取り組んでいる革新的なトレンドのひとつが、スキンケア製品の一部に高級美容薬を使用することです。実際、オンラインでもオフラインでも見た目にこだわるZ世代の間で需要が急増しています。 

今の中国では、高級美容医療が人気を博しています。このトレンドには、光治療、インターセラピー、ピコ秒レーザー、サーマルセラピー、高強度焦点式超音波(HIFU)など、いくつかの皮膚美容関連サービスが含まれます。グローバルな高級スキンケアブランドは、これらの革新的な手法を新しい作り方で開発しました。 

一つ伝統的な美容術はぜいたくなものではないですが、現在でも存在しています。「絞臉」とは、古来より伝わる美容法で、施術者の器用な手と歯を使って、太い糸と細い糸を交差させた三角形の糸をお客様の顔に張り巡らせ、細かい汗の毛を取り除いたり、眉やこめかみを整えたりするものです。広西チワン族自治区のチワン族が住む地域で受け継がれてきた伝統的な美容法ですが、ほかの一部の農村地域でも、使われているようです。 

 「絞臉」の後、女性のお肌はきれいになり、気持ちも新たになります。古くは、女性が一生に一度だけ顔を「絞臉」することは、結婚していることを示すためという地域もありました。女性が結婚の前日に叔母に顔を整えてもらうのは、古くからの婚礼習慣で、「開面」とも呼ばれています。 

 しかし現在、若い世代はこの古代の美容法にあまり興味を示しておらず、「絞臉」の技術は失われているかもしれません。「絞臉」の方も顧客も中高年の女性が多いが、一部の若い女性でも「絞臉」を選びます。 古代から伝わるこのシンプルな美容法は、顔へのダメージが少なく、常連のお客様の中には、化粧品を選ぶよりも「絞臉」を求めて来店される方もいます。 

(メルマガ黄文葦の日中楽話第62話より)

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