現代社会には、義侠の親分はゲームに存在する…
【質問】
『水滸伝』のファンです。あんな義侠の親分はいまでも存在するのですか?
【回答】
多くの日本人が中国の古典文学に愛着を持っています。しかし、現在中国社会には、義侠の親分が現れないかもしれません。
中国の侠義精神の歴史を語ってみたいと思います。 宋代以降、権威主義体制の強化と腐敗した政治の中で、侠義精神はさらに発展していたらしいです。この時代の義侠は、国家レベルでの義理や意義をより重視するようになりました。富者の財物を奪って貧者に施すことで、世の中を助けたのだから、侠義精神も「人のため」から「世の中のため」に変化していることが「水滸伝」から読み取れます。 長い間、侠義精神は国家に根強い影響を与え、数千年の歴史的発展を経て、中国独自の武侠文化を形成してきたのです。
現代には、香港の小説家の金庸、梁羽生と台湾の小説家の古龍が書いた英雄とヒロインの江湖の世界、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、ジェット・リーといったカンフースターたちが作り出した義侠、そして、香港のツイ・ハーク監督の武侠シリーズ映画…長い間、中国人の精神面に、それらの武侠文化が多大な影響を与えているようです。
古代とは対照的に、現代中国の社会環境は大きく変化し、義侠の親分を志すことは、もはや現実的ではなくなっているのです。現代社会は誰もがせかせかしていて、特にこの二三十年間、皆がお金儲けに集中して、義侠の持つ正義感や優しさ、自由といった資質はあまり目にすることがなくなります。それらこそが、社会が最も必要としているものなのに…
だから、ゲームの中しか侠義精神を味わえないのです。多くの若者が古代の義侠の親分を再現したゲームで、侠義精神を体感しているのです。
近年、中国には人権派弁護士という集団が出現しているようです。すなわち、国民の法的権利を擁護するための弁護士です。ある意味では彼らは「義侠」だと言えるでしょう。中国経済の急成長に伴い、権力の腐敗、汚職、賄賂が深刻化し、人々の人権・財産権の侵害は経済発展とともに改善されるどころか、時には非道なものになってしまうように見えます。
こうしたことから人権派弁護士の人数は増加し、社会進歩のための生きた力として無視できない存在になっています。しかし、彼らは常に権力から圧力と脅威がかけられているようです。仕方なく一部の方が「隠れる義侠」になってしまいました。
(メルマガ黄文葦の日中楽話第73話より)
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