「心の欲する所に従いて矩を踰えず」の年齢をどのように迎えている?
【質問】 日本では少子高齢化にともなって70歳まで働くことが求められつつありますが、中国の人々は論語にいう「心の欲する所に従いて矩を踰えず」の年齢をどのように迎えているのでしょう?
【回答】
中国の定年退職年齢は、男性は60歳、女性は55歳です。日本より早いです。55歳で定年退職した友達が今、広場ダンスを踊ったり、老人大学で勉強したりしているようで、結構のんびり生活をしているのです。 中国の人口調査のデータによると、2020年現在60歳以上の人口は2億6,402万人で、18.70%を占めています(うち65歳以上の人口は1億9064万人で、13.50%を占めています)。1996年、中国政府は、「中華人民共和国老年人権益保障法」を制定しました。 第一部「老年法」の目玉の一つは、「老有所養、老有所医、老有所為、老有所学、老有所楽」という五つの「老有所有」です。「老人の安心感、老人の健康感、老人の生き甲斐、老人の学習、老人の楽しさ」という目標を設定したことです。
勿論、定年退職した人にもそれぞれの生活様式があります。中国人の定年後のライフスタイルは、一般的に次のようなものです。
一つのモデルは、家族のもとに戻り、大切な人たちの相互扶助のもとで幸せに暮らすことです。まだ体力があるのなら、当然子供や孫の面倒を見るわけです。もうひとつは、何十年も働き続けた結果、体調を崩し、家族の介護が必要になってしまうケースもすくなくないことです。
2つ目のモデルは、定年退職の後、自分に合った新しい仕事を見つけ、労働の対価として得た収入で家族を養いながら、地域社会に貢献し続けるというものです。この生き方は、健康で元気であること、チームマネジメントやビルディングに一定の専門性やスキル、経験があることなどが条件となります。
3つ目のモデルは、個人の趣味を家庭生活に合わせるというもので、定年後の大切な人との付き合いと趣味への復帰の両方を大切にするものです。写真、書道、絵画、長距離走、器楽、声楽、執筆、チェス、旅行、ヨガやフィットネス、演劇やダンスなどなどを楽しむことです。 もちろん、再び起業して人生の第二の戦場を開くことを選択する人もいます。あるいは、安定した年金があれば、山奥にひっそりと暮らせる場所を見つけることもできます。
一部60代、70代の方は、お子さんが結婚して社会人になるのを見守ってきました。しかし、想定外なのは、自分の子供にお金をかけた後に、孫を迎え、子供は経済的な余裕がないため、その孫を養うためにまだ年金を拠出し続けることです。老後は子供や孫を中心に回るので、自分にとって楽な日々はないのです。
定年退職した親は料理だけでなく、掃除や数人の子供の世話もしなければならないこともあります。実は、そんな定年退職後の生活は、仕事以上に大変なのです。これで、「心の欲する所に従いて矩を踰えず」はまったくできないでしょう。 (メルマガ「黄文葦の日中楽話」90話より)
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