蛇文化で繋がる日本と中国〜「長崎のジャオドリと筑後の大蛇山」書評 〜


黄 文葦
 
私は小さい頃から、蛇は怖い動物であると認識していた。しかしその後、中国古代の四大民間伝説の一つ「白蛇伝」を知り、蛇のイメージが変わった。白蛇の精白娘は、幼い頃かわいがってくれた許仙のことが忘れられず美しい娘となって彼の前に姿をあらわした。たちまち、二人は恋に陥ってしまうという恋物語である。その劇から蛇の伝説・文化の繋がりを知った。「白蛇伝」は日本人と中国人にも親しい恋物語である。日本が生んだ初めての本格的カラー長編アニメーション映画は「白蛇伝」であった。


さらに、蛇は人間にいろいろな恩恵にも与えている。中国ではそういう伝説がある。太極拳の創始者である明朝の張三豊が鷹と蛇戦い合う場面を見て、インスピレーションを得り、太極拳の神髄を悟った。蛇の体が柔らかい。鷹が勇ましい。太極拳の姿勢の中、蛇の陰柔と鷹の陽剛が交じり合う。


先日、FBの友達で立命館大学産業社会学部教授原尻英樹先生から著書「長崎のジャオドリと筑後の大蛇山」を頂いた。日中蛇文化の繋がりを知り、興味深く読ませていただいた。
蛇を祀る九州の二つの祭、それに中国・福建省の蛇祭りを写真で紹介されていた。三つの祭りに共通する信仰やそれぞれの祭りが生まれた背景を探る。「長崎のジャオドリと筑後の大蛇山」の中、多くの写真が載せられている。蛇文化の臨場感が伝わってくる。


龍崇拝は中国伝統文化の一つとしてよく知らされている、龍は中国の伝説に出てくる中国人にとって最も神聖な霊獣である。蛇信仰は珍しい。しかし、私の故郷である福建省の南平という中部地方では、蛇崇拝がある。小さい頃、周りの大人から蛇は「小龍」だと教えてくれた。小さな龍として崇められている。原尻先生の著書の中、「ここの住民は越の時代の子孫であり、蛇を信仰しており、その蛇は中国においては後に龍になっている。龍の元が蛇であり、それは自分たちの祖先が祀っていた神である」と記載されている。それは蛇信仰のいきさつである。さらに、日本と越との関係は古く深いと分かった。


「長崎のジャオドリと筑後の大蛇山」を読んで、蛇文化が盛んである南平樟湖という地域に興味を抱くようになった。樟湖は千年の歴史を誇る鎮であり、蛇はトーテムのような存在で、マスコットであり、神の化身だと思われる。蛇文化は地域の人々の暮らしに浸透しているだけではなく、既に観光資源にもなっている。蛇祭りの際、海外から大勢の観光客が押しかけてくる。ただし、ネットで福建省の蛇文化と蛇祭りについて調べてみたのが、日本との関連性があまり言及されてなかった。原尻先生の著書には日中蛇文化を比べることができて、視野を広がった。


「長崎のジャオドリと筑後の大蛇山」によると、南平樟湖の蛇祭りが日本の祭りと似ているところが多い。例えば、お神輿にあたるものに神々などを乗せて村中を練り歩くこと。違うのは、お披露目の時に、あちこちで爆竹が鳴らされることである。しかも、祭りの最中に生身の蛇を皆の前に出して、蛇と人間が共生している。そういう光景を想像すると、一度南平の蛇祭りを見学したいと思った。


今後、南平、長崎、筑後のそれぞれの蛇文化がいろいろなカタチで繋がればいいと思う。同じの蛇文化、同じの文化遺産がよりいっそう光彩を放たせるはずである。日本に来てから、日本人から中華文化を教えてくださったことが多い。日本に来て間もない頃、アルバイト先のケーキ屋さんで、仕事の仲間が中国古代の哲学者である老子と荘子を知ることに驚いた。その後、司馬遷の「史記」が大好きな雑誌の編集者に出会った。今、原尻英樹先生が日中の蛇文化を教えてくださった。感慨深い。中華文化に熱心な日本人に感謝したい。

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とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍