日本と中国、印章文化を継承しよう
黄 文葦
日本政府は10月7日、規制改革推進会議の会合を首相官邸で開いた。菅義偉首相は全省庁の行政手続きを対象に、押印廃止や書面・対面主義の見直しに向けた方針を速やかに策定するよう指示した。関係省令・告示を年内に改正し、来年1月召集の通常国会に関連法案の提出を目指す。
新型コロナ感染拡大の中、日本中、テレワークでありながら出社の必要がある人の存在と、その背景にある「ハンコ」を浮き彫りにしている。紙やハンコの押印が必要な作業の為に出社せざるを得ない人が多いことが分かる。 以上のニュースを聞いて、中国のネット上、一部の人は「日本人はまだ印章を使っている。後進国すぎる」と日本人をあざ笑った。印鑑登録制度、今は残るのは日本だけだという。
ハンコの日中共通の漢字は「印章」、印章文化は中国と日本の共通の文化である。中国の印章の起源はいつだったのか、まだ確定的な結論は出ていないが、研究者は大体春秋戦国時代の変わり目にあったと考えているようで、学術的な発掘によって発見された印章として最も古いものは戦国時代のものだとみられる。
文化大革命の中、公的期間の印章は「公章」という、権力そのものであった。様々な派閥が権力をめぐって争い、印章を握った者は権力を掌握したとされる。紅衛兵の反乱で権力を掌握するための重要なステップは、印章を奪うこと。 長い間、ユニットや企業は、重要なことを決めるために印章を押すのは重要な一歩である。
現在中国では、「中華人民共和国印章管理法」という法律があって、国家権力、政党、司法、軍隊、武装警察、共産主義青年団、工会(労働組合)など機関の印章は相変わらず権威を持つ。印章は権力と官僚の「しるし」である。 ところが、現在の中国では個人の印章はあまり使われていない…
多くの中国人には電子決済用のQRコードは、実は従来の印章のようなものだと思われる。この数年、中国では、デジタル通貨は、ブロックチェーン(Blockchain)技術を利用して、急速に発展している。ブロックチェーンのおかげで、衣類、食品、住宅、交通機関など、暮らしのあらゆる面で、ますます便利になっている。
さらに言えば、本来、中国の人間不信の社会がIT技術に頼って、信頼関係を築いていく。現在の技術には、印章を偽造するのは簡単で、むしろ、電子印章とデジタル文書が信頼できる。
20年前、日本に上陸して翌日、「ハンコを作ってください」と大学の先生に言われた。銀行口座開設にもハンコが必要。大学院の卒業記念品はハンコであった。最初に驚いたのは、日本のハンコの種類が多くて、実印、銀行印、認印、訂正印… 因みに、筆者は、マイホームの購入、ローンなどの契約、銀行口座の開設やお金の引き出し、役所の届け出など、いつも1つのハンコですべてのものを対応するようになっている。
でも、これからほかの二つの印章がほしい。一つは落款印。自分が時々書道を練習している。自分の「作品」に落款印に押してみたい。もう一つは蔵書印、本棚の本に「黄文葦蔵書」のしるしをつけたい。 令和時代に入って、まもなくファックスは日本で幕を閉じると思う。ただし、印章文化は残されると予測する。
そして、中国と日本が協力して印章文化を一新してほしい。現在、中国では、工芸品としての印章は人気上昇。 最高峰の印章を紹介したい。筆者の故郷福州にある独特な貴重な印材の寿山石である。寿山石は福州の寿山とその周辺の村で掘り出されており、世界中で唯一希少な石であることから、いつも高価を維持されている。寿山石の種類は非常に多く、100種類以上存在するといわれる。その中、一番高級の田黄(でんおう)は「石印材の王」と呼ばれる。
デジタル技術が進んでくる中、近い将来、業務の道具としての印章の役割は終わるかもしれない。一方、印章は独特なカタチで漢字と彫刻の文化を背負う。芸術品・文化としての印章を継承しなくてはあるまい。 印章は漢字を最も美しい形で表現できる。印章文化の将来、日本と中国の共通の課題だと認識している。
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