あいまいについて思うこと

 スペシャル「私の7時のニュース」

                                  石川龍

 僕は新聞を取っていないので、主に情報源はテレビかインターネット。ただ、平日の朝はEテレ、土日はプリキュアとラブパトリーナが最優先になってしまうので、もっぱらインターネットに頼っている。

 最近はどのニュースサイトにも自分へのおすすめニュースを表示したり、興味を引きそうな記事を初期表示する機能が実装されている。でも、残念ながらだいたい興味のない記事が表示される。芸能人の不倫とかこの世で一番どうでもいい。なんでそれを表示するのか不思議です。いやほんとに。同じように思う方がいたら、一緒に某インターネット企業さんに投書しましょう。

 ところで最近はもっぱらオリンピックとそれを何とか開催しようとする政府のニュースがほとんどだ。コロナ禍の中、色々な物事がうまくいっていないだけに、ニュースを開けば閲覧者の厳しいコメントが大量に表示される。あとはおまけのように芸能人の不倫。「菅さん、あなたは総理大臣には向かないよ」「笑える。日本はいつから独裁国家になったんだ」「不倫なんて許せない。こいつは国外追放だ」とか。匿名で書き込みができるだけに、皆さん、なんというか、あれですよね。

 ひとりひとりが意見を言える場があるのは、どちらかと言えば良いことだ。意見を言えば締め出しを食ってしまうことも世間ではよくあるから。それを恐れて、建設的な意見を誰も言わなくなり、物事が悪い方向に進んでいくことも、悲しいけれどやっぱりよくあるから。でも、せっかく意見を言える場の中で、もう少し前向きな意見を書く人がいても良いんじゃないだろうか。「菅さん、あなたも頑張ってるとは思うよ。でもここはこうしたら?」「不倫はだめだね。でも何か理由があったのかな?」みたいに、結論のないような事でもいいから、誰か書いてあげられないのだろうか。そう、この結論のない、心の中をそのまま写し取ったような言葉こそ、人間の心の中なんじゃないかと思うのだけど、違うのだろうか。

 例えば算数だったら、いつも明確な答えを出してくれる。1+1は2。「あいうえお」は5文字。そりゃそうだ。誰も否定しないし、それで完成されている。道路標識はみんなで決めたルールなのだから、守らない訳にはいかない。一方で、人間はの心どうだろうか。「これが好き」と言っていたら、突然嫌いになることもある。僕が幼いころから大好きだった本や音楽の作者には、もしかしたら沢山の人を傷付けるような嫌なやつもいるかも知れない。会社のプロジェクトが失敗したら、損失に苦しむ人がいれば、無理難題から解放されて図らずもホッとする人がいる。

 そんな風に2,3個の見方をするだけでも違う答えが出てくるものだから、はっきりした答えを出すのは相当に難しい。そんな中で、あーだこーだの決めつけだけを載せたところで「本当のこと」なんて書けていないんじゃないか、「本当のこと」を知ることなんてできやしないんじゃないか、と思ってしまう(ただ、オリンピックに関する記者からの質問についての菅さんや丸川さん等の回答は、質問についての回答になっていないので、もう少しはっきり答えて欲しい)。

 この文章に結論はありません。料簡の狭い、あいまいな男が書いているから。でもね、しいて言うなら白黒はっきりの間の、グレーな部分を見つめてみても良いのではないかということです。批判的なコメントを好意的に捉えてみるとか、その逆とか、あとは何も考えないとか。人間にはそれができるのだから。

 お前がそういうコメントを書けばいいだろって?そうですか。そうですね。まあ面倒だからやらないけどね。まあいずれ。

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍