中国の人々は欧米の民主主義の歴史をどのように学んでいるのか?

 【質問】 

「中国式の民主主義」が話題となっています。そもそも中国の人々は欧米の民主主義の歴史をどのように学んでいるのでしょうか? 

 【回答】 

現在、民主主義について、多くの中国人が無関心だと思います。高校の歴史教科書の中、「民主主義の歴史」という内容があります。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど国の民主主義制度の歴史と比較もあります。欧米の民主主義を単に歴史として扱う傾向があります。 

 中国の高校生たちが以下のように欧米の民主主義の歴史を学んでいます。 

「ギリシャの古代アテネの民主主義は、直接民主制で、近代西洋では代議制と違って、近代西洋の民主主義の初期基盤を築いた。英国の政治体制の特徴は、議会権の優位性と君主の支配なき統一性にあります。ドイツの政治体制の特徴は、封建的な名残が強く残っていることであり、君主は現実に、憲法はむなしいものである」。 

「1787年に制定された合衆国憲法は、世界初のブルジョア憲法であり、この憲法の下で合衆国に確立された政治体制は、大統領制、三権分立、共和制、連邦制などの先駆的なものであり、世界的にも画期的なものであった」。 

「古代の民主主義や古典的な共和主義は、西洋の近代民主主義の重要な源となっている。一方で、民主主義と共和主義の近代的な変革を成し遂げ、新たな文脈の中で『民主主義』と『共和主義』の伝統を内的に融合させ、近代的な代議制民主主義と共和制の政府形態を開始した」。 

「一方、代議制民主主義は、それまでの貴族エリートによる権力形態を打破し、エリート政治を民主化し、民主政治のエリート主義の転向を開始した。しかし、代議制民主主義は、私的所有制度を前提としているため、形式的民主主義と民主的統治、私益と公益の問題を解決することができない」。 

 ところで、欧米の民主主義と中国式の民主主義を比べると、中国の民主主義が絶対に優位であることが教えられています。 

「自由主義と平等主義のパラドックスは、現在の西欧民主主義システムにおいて、機能的危機、正当性の危機、構造的危機、ガバナンスの危機をもたらしている」。

「一方、中国の特色ある社会主義民主主義は、西洋民主主義の固有の欠点を効果的に克服し、中国の独特の長所と優位性を十分に具現化し、民主主義の意味合いをさらに豊かにし、発展させ、西洋民主主義とは全く異なる『中国的解決策』を提供しており、重要な世界史的意義を有している」。 

つまり、欧米の民主主義は中国での実践を完全に否定されているのです。 因みに、当方は22年前に来日し、大学院で初めて民主主義理論とメディアについて勉強しました。卒業論文のテーマは「中国のSARS報道から見る民主主義とメディアの関係」です。 

中国の一部の学者は、欧米の民主主義を研究しているのですが、概ね批判的な態度になっているようです。昨年以来、コロナ対策は中国の学者が欧米の民主主義を批判する新たな論拠となった。 例えば、以下のような評論があった。

「欧米における民主化の進展は、一般市民の政治活動への参加が進んでいることを特徴としている。昔、「多士済々」という言葉があるのが、公衆衛生・緊急事態の場合、「三人よれば文殊の知恵」に適用できたいはずだ」 

「西洋の民主主義はエリートから大衆へと移行し、民主主義の範囲は拡大したが、この『民主的な平等』という信念は、新型コロナに直面して行き詰まりのサイクルに入ってしまったようだ」。 

中国の学者の中には、欧米の民主主義がコロナの感染を助長したと考えている人もいます。欧米の政府が検疫やロックダウンを行うためには、住民の同意を得なければならないです。しかし、すべての人が協力してくれるわけではなく、協力してくれない人は協力してくれる人にとっても脅威となるため、そのような人に対しては「移動を制限する」「検疫所を設置する」など中国のように厳しい措置をとる必要があると主張しているようです。 

(メルマガ黄文葦の日中楽話第66話より)

一号館一○一教室

とある大学の学生記者・カメラマンOB・OGによる先駆的Webマガジン     カバー写真:石川龍